sakigake news

69年後に消滅するであろう、秋田県の中の人が書くブログです。

そして、俺は部門長に昇格させられてしまった。

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ナンバー2の立場がお似合いなのよ、俺は。

お似合いだし、好きなのよ。

それが、ローリスク、ミドルリターンだからね。

なのに、昇格させられてしまった。

やりたくないのよ、俺は。

辛いねぇ、サラリーマンは。

中間管理職が、一番ツライ立場なんだよ。

社長と専務と常務と従業員に挟まれる立場。

最も、避けたかった自体だ。

しかし、やらざるを得なくなってしまった。

事の顛末を書いてみようか?

 

今から3年前の話だ。

2016年の夏。

クソ暑かった夏。

今年は冷夏で涼しくていいねぇ。

当時、俺は部署長という役職だった。

事の顛末は、ボイコットから始まった。

こういうの、社内クーデターっていうのかな?

 

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部下のAさん

「部署長!ちょっといいですか!わたし、もう耐えられません!」

 

「な、なに?Aさん、何があった?ま、まあ落ち着いて」

 

女性Aさん

「私が仕事していると、部門長がセクハラ発言をしてくるんです!どうにかなりませんか?私以外にも女性Bさんにも給湯室で会うたびにセクハラ発言をしてますよ!どうにかなりませんか?」

 

それを聞いていたC課長も立ち上がる。

なんだ、なんだぁ?

次は何よ?

勘弁してくれよ、マジで。

怯える俺。

 

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C課長

「僕も耐えられません。部署長は、部門長の僕へのパワハラ、知っていますよね?部署長は助けてくれるけど、部門長の行動は治らないじゃないですか。社長に話してもらえませんか?もう耐えられない。」

 

君ら、それ、俺へのハラスメントにならないかい?

俺、相当ビビってるよ、いきなりの展開に。

穏便にいこうよぉ、ここはひとつ。

マジで、やめて。

俺の心の声には耳を傾けず、畳み掛けるようにAさんが喋りだす。

 

Aさん

「もしも、このまま部門長が変わらないのであれば、わたしたちは会社を辞めます」

 

はぁ!?

今、「わたしたち」って言ったよね?

ワタシタチって。

Weってこと?

MeじゃなくてWe?

「me too」じゃなくて、「we too」ってこと?

勘弁してよ。

それって、君ら、全員で協議して決議、採択したってことかい?

仕組んでるんかい?

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。展開早すぎやしないかい?いきなり結論そこ?まずは、私が部門長に君たちからの苦情を話して、是正いただけるようにお願いしてみるからさ。いきなり社長ってのは、早すぎるだろう。会社というものは段階があってだな、いきなり社長はないよ。専務だっていらっしゃるだろ?専務を飛ばしたら、専務から怒られるよ。私の立場もわかってくださいよ。私だって、一従業員。君ら側の味方だよ。まずは、私から部門長に話してみるから・・・」

 

話を遮るように、C課長が、カットイン!

サッカー選手のロッペン並みのカットインだ。

分かりづらいか?まいっか。

 

C課長

「部署長がおっしゃりたいことはよく分かります。しかしですね、部署長が部門長に話して部門長が反省すると思いますか?今までにもありましたよね?今に始まったことじゃないですよね?いつも、その場じゃないですか。それに、きっと部門長は、言い出しっぺの犯人探しを始めますよ。わかるでしょう?部署長!」

 

うん、まあ。

でも、それでいつも丸く治めてきたじゃないかぁ。

こいつらも学習してるなぁ。

ふぅ。

こいつぁ、いつもの作戦じゃ、乗り切れやしないなぁ。

どうしようかぁ・・・。

どうするべきか?

俺の行動しだいによっちゃあ、こいつらからの俺の評価は下がるだろうなぁ。

俺への支持率低下は避けたい。

部下たちから責められ、言葉を失っていたそのとき・・・

そこへ登場したのが、営業周りから帰ってきたD課長だった。

 

D課長

「みんな、どうしたの?雰囲気悪いよ?部署長、どうかなさいましたか?」

 

D課長は、部門長を買っている人物だった。

部門長もD課長と俺を気に入っている。

部門長は、パワハラ発言、セクハラ発言で問題を起こすこともあるのだが、仕事はバリバリできるタイプで、取引先からは気に入られていた。

会社の売上の5割を部門長がまとめている。

つまり、会社に大貢献しているのが部門長だ。

ただ、部下の仕事を自分の手柄にすることも多々あり、そういう面で、ウチの部署以外からも嫌われていた。

しかし、会社の売上5割を作っているので、社長からは気に入られている。

 

「D課長、実は、かくかくしかじか、で、こんな状況なんだ。私は、部門長と話し合ってみたいと思っているんだけど、みんなが納得してくれなくて。D課長はどう思う?」

 

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D課長は、部門長のパワフルな仕事のやり方を尊敬している。

D課長は、結果主義者。

だから、部門長を尊敬している。

ただし、パワハラやセクハラ発言は賛同していない。

つまり、俺と似た人物だった。

D課長は、極めて上昇志向が高い。

出世欲もあるし、営業もC課長と違い、次々と新規開拓をしていく。

俺と似ている部分があるが、俺はそこまでの出世欲はない。

そこそこ仕事をこなして、そこそこ給料をもらえれば、いいと思っている。

新規開拓にしたって、すればするほど業務が増えるだけ。

無理にする必要はない。

そんなに新規開拓したからといって急激に給与が増えるわけでもない。

だから、俺は一ヶ月の売上目標をクリアしたら、クリアした分だけの売上をこっそりと次月にストックしていた。

俺は、馬鹿みたいにがんばりたくないのよ。

合理主義者だから、無駄な力は使いたくないわけ。

一方、D課長は、バリバリ稼いで、全部正直な数字を会社に報告するストレート勝負ど真ん中なタイプ。

ついでに、C課長は、売上目標をほぼ達成できないダメ人間タイプ。

会社に不満だけは常に言っていた。

そのたびに、僕がC課長をなだめていた。

まあ、俺自身、C課長にも似ているし、D課長に似ている部分もある。

ただ、彼らと絶対的に違うのは、徹底的な合理主義者だということ。

 

D課長

「なるほどですね。たしかに、部門長が悪いです。部署長が社長に言いづらいのであれば、僕から社長に相談いたしましょうか?その方が部署長も気が楽ですよね?」

 

いやいや、あんた、ストレート過ぎるやろ!

俺を飛び越えて、社長に直球投げるのはやめてくれ!

お前は、吉田輝星か!?

ん?この表現アリ?ま、いっか。

とにかく、そんなことしちゃ、俺の評価がだだ下がりだ。

上からも下からも下げ幅、ハンパないっちゅうねん。

このままじゃ、ダメだ。

ここは腹を決めよう。

俺も男じゃ。

ハラキリじゃ!

 

「みんなの気持ちはわかった。ここは俺から社長に話してみるよ。だから、今日のところは、刀をおさめてくれ。明日、社長に朝イチで相談するから」

 

Aさん

「わかりました。お願いします。部門長を変えてくれなかったら、わたしたち、会社辞めますから。それだけは覚えておいてくださいね」

 

う、うん。

わかったよ。

わかりゃーしたよ!

もうこうなったら、社長にすべてを話すしかない。

 

次の日の朝、俺は社長室に足を運んだ。

社長は、相変わらず、経営書を読み漁っている。

社長は勉強家で、社長が一番尊敬している人物は、稲盛和夫だ。

もちろん、致知出版社の「致知」月間購読者だ。

 


生き方―人間として一番大切なこと

 

俺が、この会社に転職したときに一番最初にもらった本。

それが、稲盛和夫の「生き方」だった。

本を読んで泣くことはめったにないのだが、あのときは久しぶりに泣いた。

ただ、最後の方は、宗教臭くて、なんていうかスピリチュアル的な感じだったので、俺レベルの人間が、こんな本で洗脳されてたまるか、という反発も感じた。

気になる人は読んでみたらいい。

ハマる人もいれば、アホか!と人もいるだろう。

最近の若者からしてみたら、古い体質の考え方だな、と一蹴してしまうかもしれない。

今の時代からすれば、古い時代の古い働き方、古いマインドの教科書みたいな本。

もし、全社員がこの本に賛同できるなら、その会社は伸びていくだろう。

ただし、それも平成初期ぐらいまでだと思うけどね。

まあ、そんな社長に、今回の件を洗いざらい、全部話してみた。

 

「社長、実は、昨日、こんなことがあって、彼らは、部門長が辞めなければ、自分たちが辞めるって言い出したんです。私もほとほと困り果ててしまって、社長に相談にあがりました」

 

社長は、俺が話し出すことをすでに察知していたかのように、驚きもせず、淡々と俺の話を聞いてくれた。

 

社長

「なるほどなぁ。そういうことになってしまったか。私も彼にはたびたび注意していたんだけど、ついにそこまでいっちゃったか。で、君はどう思う?」

 

まあ、そう聞いてくるわな。

社長は、必ず、君ならどうする?

君なら、どうしたい?

解決策を自分で考えてみたかい?

私に相談してくる前に、自分で出来ることはなかったのかい?

自責思考を求めてくるタイプだ。

まあ、当然、俺はわかっていた。

俺が出す答えはひとつ。

三人で顔を突き合わせて、真摯にすべてを話す、そして解決策を見出すこと。

答えがどの方向に向くかはわからないが、それしか、俺には思い浮かばなかった。

 

「社長、もうこうなってしまった以上、社長と私、部門長の三人で話し合うしかないと思うんですよ。こうなってしまったのは、部門長の責任ですし、改善していただくしかありません。もちろん、部門長を辞めさせることには私も反対です。会社の売上の5割を占めていますからね」

 

社長は、深くうなづき、俺の考えに同意した。

 

社長

「わかった。君のいうとおりだと思う。私と部門長、ふたりだけで話し合おうと思ったが、部下から相談された君にも同席してもらった方が良さそうだな」

 

その日の夜、社長が部門長を呼び出した。

社長室で俺と部門長と社長が顔を突き合わせる。

部門長は何も気づいていない。

社長に愛想をふりまく。

 

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部門長

「社長、こないだのゴルフコンペ、調子良かったみたいですねぇ。80台だったらしいじゃないですか。取引先の◯◯さんから、聞きましたよ。私も今度お供させてください。社長の腕前にはかないませんがねぇ。エヘヘ」

 

社長は、にこやかな表情だが、目の奥は明らかに笑っていない感じがした。

 ちょっと間が空き、社長が俺に話をふる。

 

社長

「で、今日は、部署長から報告と相談があって、君を呼び出したんだ。部署長、君から話してくれ」

 

部門長

「なになに?ビックなプロジェクトの提案かなぁ?楽しみだなぁ。部署長、聞かせてください」

 

部門長は、なんの気配も感じていない。

まさか、このあと、奈落の底に突き落とされるとは。

部門長に、悪気はない。

パワハラ発言も、セクハラ発言も、わざとじゃない。

彼の性格から来るものであって、他人の気分を害している、と少しも思っていない。

まあ、一番タチの悪いタイプなわけ。

俺は、恐る恐る、言葉を慎重に選びながら、すべてを話した。

 

「実は、部署内のメンバーから、部門長のセクハラ発言とパワハラ発言に関して苦情がありました。今日はその改善のために、部門長をお呼び立ていたしました。忙しいなか、お時間を作っていただき、ありがとうございます」

 

みるみる顔が真っ赤になり、一気に湯気が上がる部門長。

 

と、同時に、「社長の前でそんなことを言うのか?俺に直接言えよ!」という怒りの視線を強く感じた。

社長の手前、取り乱すことはないようだ。

歯をくいしばっている。

 

部門長

「そうですか・・・!私にも至らぬところがあったと思います。以後、反省し、改善し業務に邁進していきたいと思います。社長、このたびは申し訳ありませんでした」

 

社長

「話はそれで終わりじゃないんだよ。部署長、続けてくれ」

 

部門長

「まだ、なにか・・・?」

 

若干、俺をにらみつける部門長。

俺は、喉がカラカラになってきた。

ツバも出やしない。

テーブルに置いてあった冷茶を一気に飲み干す。

それにしても、蒸し暑い夜だったなぁ。

今だに脳裏にちらつく場面だ。

緊張の度合いで言ったら、高校生のとき、好きになった子に告白するときぐらいの緊張だ。

とにかく言うしかない。

 

「実は、部署内のほぼ全員が、部門長が会社をやめない限り、自分たちが辞める、と言い出しているんですよ。私も説得しましたが、彼ら本気のようで一歩も引かないんです。困り果てて、社長に相談したところでした。本来であれば、部門長に真っ先に報告せねばならなかったかもしれません。申し訳ありません」

 

まさかの展開に、肩を落とす部門長。

そして、言葉を失う部門長。

事態を把握を否定しているかのような目の動き。

なぜなんだ?なぜなんだ?

彼の心の声は、なぜ?しか出てこなかったと思う。

やがて、沈黙から30秒ぐらい経ったころだろうか・・・

 

部門長

「ヒック、ヒック。わたしだって、悪気はなかったんですよ。いや、悪いことだとは思いますよ。それでも」

 

そう、部門長は泣き始めたのだ。

ボロボロに涙をこぼしながら、俺らにお構いなしに泣き始めた。

そして、言い訳を並べ始めた。

それは、まるで自分が被害者であるかのように、子どもじみた言い訳を俺と社長に話し始めた。

聞くこと3分ぐらいだろうか。

正しい時間の感覚までは覚えていない。

冷静に黙っていた社長が話だした。

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社長

「もうこうなってしまったことはしょうがない。これは君の責任だ。君は部署長が何度も注意していたのに、その場しのぎでなんにも気づいていなかった。それが、今回の原因をもたらしたんだよ。わかるだろう?」

 

部門長

「わかりますよ。じゃあ、俺はどうすればいいんですか?私が会社を辞めれば解決するんですね!辞めますよ!」

 

開きなおり、自ら辞める宣言をした部門長。

しかし、社長は焦る気配はない。

社長は、部門長を諭すように話し始めた。

 

社長

「君の我が社に対する功績には日頃から感謝している。君がいなければ、今、この会社はないだろう。私も社長という立場でこうやって毎日、趣味のように経営を研究できることもなかっただろう。本当に君はよくやってくれている。その功績に対し、評価しているし、感謝している。しかし、今回の件とは別の問題だ。時代は変わったのだよ。君の行為そのものが受け入れられるような時代ではなくなったのだよ。それは、わかるだろ?」

 

怒りから目が冷め、社長の言葉に感動したのか、再び泣き出した部門長。

熱しやすく冷めやすいタイプなのだろう。

瞬間湯沸器だ。

続けて、社長は言う。

 

社長

「この場で、人事異動を申し上げる。新しい会社を立ち上げる。部門長には、そこの経営を任せたい。それなら、文句はあるまい。私には君が必要だ。君とまだ一緒に働きたい。どうか、新会社の社長になってくれないか?君が嫌なら、もうこの会社に君の居場所はない。君がしたことは従業員を傷つける行為だ。私は従業員の要望も汲み取りたい。だから、これは折衷案だ。どうか納得してもらえないだろうか」

 

俺は驚いた。

そうか、この手があったか。

従業員の要望に耳を貸し、部門長を現在の会社から外す。

しかし、売上を確保したいので、部門長を新しい会社の社長に抜擢する。

これによって、両者を失わずに済む。

まあ、こんなことは社長しか判断できないわな。

俺には思いつかないし、やりたくもないわ。

社長って大変だな。

俺は、一生、適当に部署長ぐらいにいるのが、一番いいわ。

部門長は、泣きながら、社長に最大限の感謝を伝え、社長室をあとにした。

 

社長

「で、代わりの部門長だが、君にやってもらう。いいだろ?」

 

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俺氏、絶句。

マジでやりたくなかった。

俺は、出世したくないのよ。

適当にこなしたいのよ、仕事は。

ますます中間管理職になっちまうじゃないか。

もちろん、俺に断る術はない。

 

「は、はい。私ですか?・・・。ありがとうございます。精一杯がんばらせていただきます」

 

その後、俺は部門長になり、今に至る。

新会社を立ち上げた元・部門長は、まだ3年目ということもあり、売上は伸びないようだが、地道に一人でがんばっている。

事務が一人いるだけで、部下はいない。

しかし、初心を取り戻したがのごとく、活き活きと働いているようだ。

 

従業員の視点からすれば、なんで辞めさせないのか?と思う読者もいるだろう。

わからなくはない。

しかし、経営者の視点からすれば、会社の損失たるもの想像に難くない。

中間管理職の俺からすれば、なんとも言えないな。

ただ、経営者に俺は向いていない、と思った。

そして、部門長がかわいそうだと思った。

それと、時代が変わり、いろんなハラスメントがある現代、俺自身も発言に気をつけねばならない、と思った。

俺が部門長になったことで、数字が以前より上がったということはない。

むしろ、横ばい、ぶっちゃけ、それ以下だ。

でも、部下たちは安心して、働いているようだ。

それでも、優秀な社員からポツリポツリとこの3年の間に辞めていってるのだが・・・。

あ、その話は、おととい書いた話だけど。

 

まあ、会社の古い体質はそう簡単には変えられないってこと。

それは、秋田県も、日本もね。

 それじゃ、また明日。

俺は、これから残業する。

一昨日の案件、転職エージェントとこれから打ち合わせだ。